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1.カルシウムについて

カルシウムの効果

窒素過多が病害虫発生の原因であることは言うまでもありませんが、カルシウムや珪酸、各種成分の吸収が病害虫の抵抗性に影響しています。カルシウムが充分に吸収されておれば、酵素反応の触媒的に機能し、病原菌の侵入のシグナルを植物組織に伝え、発病を阻止するファイトアレキシン(抗菌物質)を発生する仕組みがわかってきました。

カルシウムはペクチンと結合して細胞壁の強度を高め、病原菌が植物に侵入する際に出す細胞壁分解酵素の活性を強力に弱める働きがあります。カルシウムの吸収は窒素の吸収を抑制する働きがあり、節間を縮め、葉が立ち、樹が締まります。熟成を遅延させ、高濃度吸収の場合は肥大も抑制します。低温・乾燥・病原菌の感知対応能力が向上するなどストレスに強くなります。老化を抑制し、根や新芽など生長点を発達させます。また、呼吸を抑制し、炭水化物を蓄積し、実へ移行させるなど収穫物の肥大を促進します。エチレン生成を抑制し、貯蔵性を向上させます。カルシウムを吸収させることで、病害虫に対する抵抗力が高まり、農作物の体質改善が強化されていきます。

しかしながら、カルシウムは土壌中の炭酸イオンやりん酸イオンと結合して難溶性になりやすく、植物に吸収利用されにくいのが特徴です。

生石灰、消石灰、苦土石灰などは土壌のPHを急激に高めます。しかし、すぐに難溶性となり土壌固定されます。また、腐植質などの有機物を分解し、土を固め、生物性を乏しくいたします。カルシウムは鉄やマンガン、亜鉛、加里、マグネシウム、窒素などの塩基類と拮抗作用があり、土壌がアルカリになることで、これらの成分は吸収利用されにくくなってしまいます。化学肥料の多様で強い酸性を示す土壌なら、これらの石灰を使用して、PHを中和しなければなりません。

有機栽培に必要なカルシウムとは?

しかしながら、有機栽培の圃場は殆どPHを矯正する必要性はなく、むしろ急激なPHの上昇は好ましくありません。有機栽培に必要なカルシウムは土壌PHに急激に影響を与えないゆっくりカルシウムを供給できる肥料が必要と考えます。それには貝化石肥料や卵殻肥料などの天然の有機石灰が良いと考えます。

卵殻肥料の熱処理をしていない物は雑菌の圃場への持ち込みを注意しなければなりません。ニオイのあるものは要注意です。カキガラなども港に放置された、腐敗したものであれば問題です。

今までのカルシウム施用はPHの中和の考えから、元肥として全面散布されてきましたが、有機栽培では中和が目的でなく、カルシウムを効果的に効かす努力が必要です。元肥を始めとして、追肥の必要性も感じます。

カルシウムの有効な使い方

玉葱やみかん柑橘などの肥大期には炭水化物の移行に伴いカルシウムや加里成分が多く吸収されます。肥大期前にカルシウムの吸収を強化して、肥大促進やベト病などの病害対策や品質向上、貯蔵性の向上を計ることが大切です。消石灰や苦土石灰を局所的に施用すれば、局所的に急激なPHの上昇で作物は障害を受けます。しかし、卵殻肥料は障害をもたらすことはありません。局所施用を発展させ、イチゴやトマトなどへは穴肥を試みたり、多品目栽培のホウレン草には作付畝位置への層状元肥で対応できます。ホウレン草もアルカリの中和が必要でなく、カルシウムの吸収が必要なのです。 

また、有機石灰を施用後に竹酢液300倍を500リットル/10a施用するなど溶かす工夫も効果的です。また、苗づくりに利用することも有効と考えます。大豆(豆科)、トマト、キャベツ、タマネギ、里芋、みかん、ブドウ、りんごなどは石灰植物なので、積極的にカルシウムを吸収させて行きたい。カルシウムは人間にとっても精神安定や骨格形成に必要不可欠の成分です。

2.石灰防御へ

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